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シネマとライブと雑多な日々

映画やライブを見て感じたこと、考えたことを気ままに綴ります。

#今日の1本 原作本を超えた爽快感が味わえる「魂萌え」 

2006年映画 邦画

桐野夏生の原作本は衝撃的だった。
「夫の浮気」や「財産を狙う子ども」という題材はよくある話だろう。それが、彼女の手にかかると、ドロドロの怨念の世界へ行くのではなく、59歳の女性の凄みのある、それでいて一種さわやかな成長物語へと結実する。

夫に10年来の愛人がいた。

そのことを夫の死後知った主人公。これは、ものすごく残酷なことだと思う。夫が生きていれば、ののしり、罵声を浴びせ、自分の感じた裏切りの気持ちを相手にぶつけることができる。それができない状況では、普通ならどこまでも、どこまでも深い穴に落ちていくのではないだろうか。

こういう傷は、夫を愛していたからより傷つくとか、愛していなかったから傷つかないとか、そういう問題ではないと思う。自尊心の問題なのだ。

主人公は、子どもたちにもその自尊心を踏みにじられるような行為をされるが、彼女なりのやり方で、最後には踏みにじられた自尊心を取り戻していく。

原作に感動して映画を見ると、多くの場合、失望することが多いが、阪本順治監督のこの映画は、私の中では数少ない例外となった。

まず、キャラの立ち方がスゴイ!

本を読んでいたときには、60歳間近の主人公、その夫、愛人の色恋が、リアルに感じられなかった。でも、映像化されることで、よりリアルに主人公やその周辺の人々の息づかいが伝わってきた。

特に、妻vs愛人の対決場面は見所満載だ。

妻を演じる風吹ジュンと愛人を演じる三田佳子。とても静かな台詞のやりとりの中にも、火花が飛ぶさまが見えるようだった。

ラストに向かっては、原作をも超えたのでは?と思えるような爽快感だった。

もちろん、現実はそう甘くない。そう言えるかもしれないが、映画にはやはり、どこかに夢がないと…。私自身は、その希望あふれる描き方にとても感動した。

特に、ラストに流れる映画「ひまわり」。

多感だった10代のころ、ソフィア・ローレンとマスチェロ・マストロヤンニの駅での別れのシーンに大泣きした記憶がある。戦争で行方不明だった夫がロシアで生きていると知り、会いに出かけた妻。しかし、記憶喪失だった夫にはすでにロシア人の妻と娘がいたと知る。

駅での二人の別れのシーン。妻は涙を隠し、列車に乗る。

夫を深く愛しながらも、すがりつくことをせずに、前を向いて歩いていくこのシーンが、見事に「魂萌え」の主人公に重なってくるのだ。

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