シネマとライブと雑多な日々

映画やライブを見て感じたこと、考えたことを気ままに綴ります。

何か起こるかわからない、おどろおどろしさをじっくり味わうべきタランティーノ監督の新作映画『ヘイトフル・エイト』

キル・ビルVol.1』以来、ずっとご無沙汰していたクエンティン・タランティーノ作品を久々に観た。

タランティーノ作品と言えば、血みどろだし、血みどろだし、血みどろだし…ということで、観に行かなくてもいいかなぁと思っていたけれど、Twitterで流れてきた「web DICE」の骰子の眼の記事にちょっと惹かれてしまった。

なんでも、映画美術を種田陽平さんという日本人の方が担当したというのである。

製作費50億円!やりたい放題のタランティーノ新作、映画美術・種田陽平が秘話語る|極寒の山小屋で血みどろの惨劇!撮影はLAスタジオをまるごと冷蔵庫に - 骰子の眼 - webDICE

特にネタバレしている内容ではないので、観る前に読んだのだけれど、映画美術のことだけでなく、日本とハリウッドとのシステムの違いや、映画美術に対するアプローチの違いなどいろいろ踏み込んだ内容で、長いインタビューだけれど一気に読めた。

映画はタイトルロールから、なんだか昔々の古き良き時代の映画っぽさ満載。

特に第88回アカデミー賞の作曲賞を受賞したエンニオ・モリコーネの映画音楽と、カメラワークがめちゃめちゃいい。

馬車が雪道をただただ走るシーンなのに、どこからか何かとんでもない物がでてくるんじゃないかとドキドキする。

吹雪で足止めをくらった人々が、山小屋でコーヒーを飲んだり、シチューを食べたり、前半は淡々とした描写が続くだけなのに、床に落ちたゼリービーンズを執拗に映し出したり、壊れてしまった扉からの出入りを何回も繰り返したり。何が起こるのだろう、誰が犯人なのだろう、と観ているものが臨場感をもって密室劇に参加できる仕組みになっている。

終盤に向かって一挙に血みどろ度が増すのだけれど、今までに比べれば血みどろの度合いというか、過激さは少なく感じた。血みどろを格調高く描いたというか、とにかく、元祖映画オタクらしい、古き良き時代の西部劇の雰囲気とそれに目一杯タランティーノ味を振りかけた一癖も二癖もある映像美がじっくり味わえる。

何でも、この映画は70ミリフィルムで撮ったらしく、アメリカでは専用の映画館で公開したほど、凝りに凝っているのだけど、残念ながら日本ではそんな専用映画館は全国にないので、本来、監督が見せたかった状態での上映は叶っていないもよう。

フィルムについて詳しい知識がないから、アメリカで上映されたものと、日本で私たちが観たものと、どんな違いがあるのかわからないのだけど、少なくとも、『ヘイトフル・エイト』は、自宅の小さいテレビで観るよりは、映画館の大きいスクリーンで観たほうが数倍楽しめるだろうなと思える作品だった。

最後、まさかの場所を撃たれるサミュエル・L・ジャクソンとか、最初だれだかわからなかったカート・ラッセルとか、お役人役が妙に似合うティム・ロスとか、懐かしくも芸達者な役者さんがたくさん出ていて、なんか、NHKのドラマを見ているような安定した気持ちで、血みどろの密室劇が楽しめた。

gaga.ne.jp

 

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