シネマとライブと雑多な日々

映画やライブを見て感じたこと、考えたことを気ままに綴ります。

日本のアニメや映画が大好きな監督が撮ったスペイン映画『マジカル・ガール』

冒頭と最後に流れる長山洋子のデビュー曲「春はSA-RA SA-RA」がいつまでも耳に残って思わずiTunesでぽちっと買いたくなるほど。いまや演歌歌手としてしか知らない人も多いだろうけれど、アイドル歌手だったんだよなぁ、声が伸びやかで歌うまいなぁ、などと思いながら聞き惚れる。

この映画のキーになる人物が4人いるのだけど、そのうちの一人、12歳の少女アリシア(ルシア・ポジャン)が日本のアニメ「魔法少女ユキコ」(架空)が好きという設定なので、スペイン映画なのに日本の歌が流れていてもおかしくない。

この少女アリシア白血病になってしまい、元文学教師だった無職の父ルイス(ルイス・ベルメホ)が彼女の願いをかなえるため、魔法少女ユキコのコスチューム(1点ものなので90万円もする)を買ってあげようとするところから悪夢が始まる。

ルイスがコスチュームのお金を得るために脅すことになる闇を抱えた美人妻バルバラバルバラ・レニー)や、そのバルバラの魔力に見入られた元数学教師ダミアン(ホセ・サクリスタン)。出会うはずのなかった4人が出会うことで、ひたひたとじわじわと、残酷な最後に向かってストーリーが進んでいく。

日本の歌やアニメが使われているけれど、そこに展開するのは、かわいく子どもっぽい世界ではない。ねっとりしているけど、さらさらと乾いてもいて、とてもダークな雰囲気に満ちている。

いくら娘のためとはいえ、90万円もするコスチュームを買おうとするルイスや、お金を用意するために大富豪の「とかげ部屋」に入っていたぶられるバルバラなど、登場人物の行動は突っ込みどころ満載で、一歩間違えるとマンガチックに見えてしまいそう。ところが、演じている俳優さんがみんなすごくいい面構えで、リアルなので、こんな世界がスペインにはあるのかもなぁと、監督のマジックにあれこれ思いをはせられる。

特に「とかげ部屋」は扉のみで、その内容が全く描かれないので、観ているほうは「部屋の中には獰猛な動物がいるのだろうか?」「バルバラの傷からして、鞭だろうか?」といろいろ、いろいろ考えてしまう。

バルバラとダミアンの関係など、説明的な映画ではないので、「あ、ここちょっと巻き戻して観てみたい」と思わせるシーンもあって、もう一回観たら、また新たな発見があるかもしれない。

感動作ではないので広くおすすめする映画ではないけれど、ダークな世界観が好きな人にはおすすめ度90%。

映画『マジカル・ガール』公式サイト

ちらしにカルロス・ベルムト監督が影響を受けた10作品が紹介されていたので、備忘録として。

魔法少女まどか☆マギカ

砂の女

冷たい熱帯魚

「バンズ・ラビリンス」

「人生スイッチ」

「ファーゴ」

「ドライヴ」

「昼顔」

ラルジャン

「レザボア・ドックス」

余談だけど、普段アニメはほとんど観ない。ところが、夫はアニメが結構好き。なので、わが家のレコーダーにTV版と劇場版の『魔法少女まどか☆マギカ』があるのは知っていた。大好きな韓ドラが録画できなくなるから、早くこのアニメを消してほしいと密かに願っていたけれど、消さなくてよかった。『マジカル・ガール』を観た後、俄然興味がわいて、 劇場版の『魔法少女まどか☆マギカ』前編と後編を観た。ダークな世界観でおもしろかったけど、もうひとつある新編とTV版を観るまでには至っていない。。。