シネマとライブと雑多な日々

映画やライブを見て感じたこと、考えたことを気ままに綴ります。

ゲスは男のあこがれなのか!? 最初と最後に流れるT字路sのブルースがよかった新作映画『下衆の愛』

場違いなところに来てしまった感がきっとするに違いない…。と思いつつ、なんかこういう映画が気になってしまう。

『下衆の愛』公式サイト

4月に観たい映画候補に挙げていたものの、レイトショーのみの気配だったので、観ずに終わるだろうなぁと思っていたら、公開から1週間のみ、18時10分からの上映があったので、テアトル新宿に行ってきた。

映画館入り口では、もぎりの人に並んで、背の高い外国人のイケメンさんがポストカードを配っていた。予備知識がまったくなかったので、なぜ外国の人?と頭の中に???がいっぱいになりながら、ポストカードをびりびりあけると、キャストの写真が裏表に印刷されていた。なんだ、ポストカードじゃないじゃんと残念に思いながらも、昔の映画ポスター風のポーズにおしゃれなデザインだったので、こういう特典もいいなぁと思っているところで、映画が始まった。

主人公は、売れない映画監督、アラフォーのテツオ(渋川清彦)。過去に映画祭で賞をとったことがあるものの、それを唯一の自慢に、あやしげな俳優向けワークショップで何とか小銭を稼いでいる。実家に住んで食べさせてもらっているのに、毎夜、女を連れ込むので、包丁を持った母親に追いかけ回されたり、妹から罵声を浴びせられたりしている。そんなテツオのもとに、新人女優ミナミ(岡野真也)が現れ、新作映画を撮ることへの希望がわいてくるが…。

くすっと笑えるシーンも結構出てくるのだけれど、積極的に笑う人が少なかったので笑っていいのか悪いのか、迷うシーンが結構多かった。飲み屋のシーンとか、トイレに連れ込もうとして殴られるシーンとか、足をなめる(テツオじゃないけど)シーンとか。

そのせいかどうか、テツオがただただ情けなく、本当に心根が卑しい下衆な男にしか見えなくて、なんかどんより暗い気持ちになってしまった。

今思い返すと、後半は新作を撮るという希望に向かって少しずつ変わっていくテツオが描かれるのだけど、演じる渋川さんがシブすぎるのか、監督がアラフォー男の必死さをセーブして見せているのか、それとも、テツオは希望に向かうと言いながら、ただ必死になる自分に酔っていただけなのか、よくわからなかった。

テツオより、助監督のマモル(細田善彦)のほうがより共感できて魅力的なキャラだったので、最後までテツオの下衆な映画愛には乗り切れずに終わってしまった感じだ。

最近ちまたをにぎわせているゲスというキーワード。テツオには下衆から脱皮してまっとうに生きてほしかったのだけど、まっとうに生きている人は逆にゲスのまま生きるテツオにあこがれる部分もあるのかもしれない。

監督は、『グレイトフルデッド』の内田英治。プロデューサーはアダム・トレル。もしかして、ポストカードを配っていたのはこの映画のプロデューサーだったのかも。この映画は、昨年の第29回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門で上映されている。そのときのQ&Aのレポートが以下のサイトで読めるので参考までに。

2015.tiff-jp.net

 

ぜひともおすすめしたい映画というわけではなかったけれど、ラストシーンと冒頭と最後に流れるT字路sのブルースはすごくよかった。特に、T字路sのイトウタエコさんの声と歌い方。4月12日(火)と19日(火)のレイトショー後にミニライブをやるそうである。

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