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シネマとライブと雑多な日々

映画やライブを見て感じたこと、考えたことを気ままに綴ります。

切ないのに、満たされた気持ちになれる! リアルなファンタジー映画『世界から猫が消えたなら』

2016年映画 邦画

世界から猫が消えたなら、この世界はどう変わるのだろうか……。

世界から僕が消えたなら、いったい誰が悲しんでくれるのだろうか。

 120万部超のベストセラーとなった原作本は未読だったのだけれど、このキャッチコピーと自転車のかごに乗せられた猫のビジュアルに惹かれて観に行った。

主人公は、猫と暮らす30歳の「僕」。

ある日、自転車に乗っていたときに転び、病院で脳腫瘍だと告げられる…。手術もできない状況…。明日をも知れない命…。

取り乱すこともできず、ぼんやりとした気持ちで家に帰ると、自分とそっくりな男が食卓に座っていた。男は自分を「悪魔」と名乗り、「この世界から何かをひとつ消す代わりに、寿命を1日延ばすことができる」と不思議な取引を持ちかけた…。

主人公が自転車で転ぶとき、体が上空にふわりと浮き上がり、一回転するシーンがスローモーションで描かれたり、まさかの「悪魔」が出てきたり、突然舞台がアルゼンチンに飛んだり、時間が前後したり…。

お涙ちょうだい映画によくあるベタッとした描写がまったくなくて、ときにサラサラと、ときに淡々と、ときにファンタジーの要素を加味して大胆に!

それなのに、後半は親と子、元彼女や友人、猫とのエピソードが心にしみて、しみて、何気ないシーンに涙があふれてくる。

ふだん声高に叫んでいなくても、誰しも認められたい気持ちや、自分の存在意義への不安があるのではないだろうか。そんな答えがあるようで答えが出ない問いに対して、この映画は、ふんわりと包み込んでくれるようなやさしさがある。心にぐっとくるたくさんの言葉も出てくるのだれど、心にしみてくるのは言葉では現しきれない「何か」。

寿命を延ばす代わりに消えるものとして「悪魔」が選ぶのは、「電話」「映画」「猫」。その流れの中で、とりわけ「映画」のエピソードが熱く描かれている。

レンタルビデオ店に勤める友人と「僕」との会話の中で出てくる『アンダーグラウンド』や『燃えよドラゴン』『ライムライト』『太陽を盗んだ男』『海の上のピアニスト』『恋人たちの予感』、そして、元彼女とのエピソードにからむ『メトロポリス』や『ブエノスアイレス』…。

原作者について全く知らずに観ていたので、「きっと映画オタクなんだな」「まるで文系タランティーノみたいだな」などと思っていた。

パンフレットを見て知ったのだが、原作者の川村元気さんは、『モテキ』や『おおかみこどもの雨と雪』『寄生獣』『バケモノの子』『バクマン』などを製作した映画プロデューサーでもあった。それを知って、なんか納得。パンフレットに書いてあったのだけれど、原作本は、川村さんが10代のときに、40代で脳腫瘍で亡くなった叔父さんの話なのだそうで、15年を経て完成した叔父さんへの「卒論」なのだそうだ。そのエピソードもまた泣ける。

このパンフレットには、出演俳優や永井聡監督、撮影や照明などのスタッフの人が「人生最後に観たい1本」を紹介しているので、映画愛が強い人は買うとよりいっそう楽しめると思う。

映画『世界から猫が消えたなら』公式サイト

映画の最後に流れる「ひずみ」という歌がとてもよくて、iTunesで思わず買ってしまった。聴くたびに映画の世界観に包まれているようで、切ないのだけれど、満たされた、ポジティブな気持ちになれるから何回も何回も聴いている。

www.youtube.com

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