シネマとライブと雑多な日々

映画やライブを見て感じたこと、考えたことを気ままに綴ります。

第16回東京フィルメックスで観客賞に輝いた『最愛の子』

昨年開催された「第16回東京フィルメックス」で観た、ピーター・チャン監督の『最愛の子』。観客賞をとっただけあり、公開直後から話題となって、現在、絶賛上映中。

中国で実際に起こった誘拐事件を、誘拐された側、誘拐した側の双方から描いている監督の視点が、とても新鮮だった。

特に、誘拐した側を描いた後半。夫が誘拐した子だと知らずに、精一杯愛して育てていたヴィッキー・チャオ演じる妻が、夫のうそに気づくシーン…。

病院の廊下にひとりたたずみ、涙に暮れる妻の姿がかなり長い間映し出される。

そのうそは、人身売買や一人っ子政策だけでなく、男女差別、貧富の差など、中国が抱える社会問題のさまざまを含んでいて、静かに、でも強烈に胸に迫ってくるシーンだった。言葉で説明するのではなく、引きの画面で静かに見せるのだが、説教する映画は嫌いという監督らしさが現れていたように思う。

「第16回東京フィルメックス」では上映後に監督のQ&Aがあったので、そのときのメモを覚え書きとして。

実際の事件を報道するニュースを見たとき、力を感じる物語だと思った。現代中国のいろいろな問題を含んでいた。未だに子どもの売買をしている。

毎年2000人の子が養子になっている。労働力として男の子がほしい。1万人民元を出して子どもを買う。

社会問題として取り上げるより、事件が発生した背景の両方を見るべきと思った。ひとりっ子政策は、中国はあまり言われたくないところ。この物語を通じて、両方から見れるといいと思って、第一部、第二部という描き方をした。商業映画で大事な点。誘拐された側の人を丹念に描く。でも、誘拐した側も悪い人ではない。

観客に説教するような映画は好きじゃない。社会活動をしている人に、「あの映画はよかった」と言われた。チャリティーを助けてくれる。SNSなどのソーシャルメディアでいくら社会問題を伝えても伝わらない。映画を見ることで問題が存在することを認識してくれる。

誘拐した側のお母さんを演じたヴィッキーチャオさんについて。彼女はすっぴんで登場。説得してすっぴんで出てもらった。ファンデーションすらもぬっていない。

走り書きメモなので、きちんとした内容を知りたいかたは、以下のフィルメックス公式から出ている動画をどうぞ!

 

www.youtube.com

 

www.bitters.co.jp