シネマとライブと雑多な日々

映画やライブを見て感じたこと、考えたことを気ままに綴ります。

♯今日の1本 ラブシーンに思わず涙。地味だけど疲れた心におすすめの映画『歓びを歌にのせて』 

スウェーデン映画である。

2005年の公開当時の雑誌には、「指揮者として大成功をおさめた男が心臓を病み、田舎のコーラス隊の指導を通して、新たな人生の歓びを見い出していく……」と紹介されていた。

果たしてこれは、音楽映画なのか、男の再生の物語なのか、ちょっとつかみかねる気もしたし、宣伝ポスターの主人公は、どう見てもくたびれた中年男で、イケメン好きとしては決してそそられなかったのだけど、なぜか気になって、気になって、その年のファースト・シネマとして観た。

……で、とっても良かったのである。

主人公のくたびれた中年男が、物語の最後の方で、年の離れた若き女性とついに愛を確かめ合うのだが、そのシーンに思わず涙…。ラブシーンに生つばを飲み込んだことはあるが、涙したのは初めてだ。

しかも、「えーっ?」と思うような裏切りのラストだったのに、音楽はもちろん、それに絡めて描かれた人間ドラマはとっても感動的だった。

スウェーデンはコーラス人口の多い国だそうである。

心臓を病んで、幼い頃に住んだ土地に帰った主人公のダニエルは、教会の聖歌隊の指導を引き受けることになるのだが、そこには、牧師の奥さんをはじめ、20代から80代のさまざまな男女が集っていた。そして、それぞれが、笑顔の影に、夫の暴力や恋人の裏切り、厳格な夫との冷たい関係などなど、さまざまな悩みを抱えていた。

世界的な指揮者の大胆な指導方法で、聖歌隊はぐんぐんうまくなっていくのだが、同時に、それぞれの生き方にも影響を与えていく。

この映画は、男の再生物語としてだけでなく、その周辺の人々の再出発劇としても楽しめる。登場人物はほとんどみんな、どこにでもいそうなおじさん、おばさんばかりなのだけど、それが逆にリアルだし、一方で、コーラスのシーンはとてもドラマティックで、映画的魅力に満ちている。

特に、「ガブリエラの歌」は鳥肌もんである。思わずサントラCDを買ってしまったほど!

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