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シネマとライブと雑多な日々

映画やライブを見て感じたこと、考えたことを気ままに綴ります。

♯今日の1本 もうひとつのアメリカをじんわり堪能できるヴィム・ヴェンダース監督の『アメリカ、家族のいる風景』

2006年映画 洋画

観終わったあと、不思議な感覚に包まれる。

おちぶれた映画スターの主人公は、ただただ身勝手な男なのに、なぜか憎めない。老境に達して、「自分の人生なんだったんだろう」と振り返り、30年もほっぽらかしていた母親に会いに行くことからして、超身勝手。しかも、その母親から「あんたには実は子どもがいるんだよ」と知らされ、かつて見捨てた女が住む街に、子探しに行くにいたっては、情けないを通り越してかっこわるい。

それなのに、憎めない。

その人間くさくて、情けない生き様に、「人生ってそうだよなぁ」と心傾いてしまうのだ。

この映画は、1984年の第37回カンヌ国際映画祭パルム・ドールに輝いた『パリ、テキサス』のコンビが再びタッグを組んだ作品だ。

監督ヴィム・ヴェンダース、脚本サム・シェパード

しかも、『パリ、テキサス』のときには叶わなかった、サム・シェパード主演が、見事叶って、かっこわるいサム・シェパードが堪能できる。しかも、かつて見捨てた女の役を、公開当時は私生活のパートナーであったジェシカ・ラングが演じている。彼女は年を召してても相変わらずかっこいよい…。

ハリウッド大作映画ばかり観ていると、アメリカには正義感に満ち、常に前向きな善人か、強烈な悪人しか住んでいないのではないかという錯覚に陥ることがある(最近はそんなことはないけれど…)。

一方、アメリカのインディーズ系映画を観ると、アメリカにもごくごく普通の市民が生活しているのだなぁと当たり前のことを改めて感じるが、この映画は、ドイツ人であるヴィム・ヴェンダース監督が、アメリカを撮っているので、何とも摩訶不思議な雰囲気に包まれた映画になっている。

ドイツ映画でもない、アメリカ映画でもない、ヴィム・ヴェンダースの世界がそこにある。この映画を撮った後、ヴェンダース監督は長年住んだアメリカを離れ、ドイツに戻ったのだという。

この映画が日本で公開された2006年、ヴェンダース監督が、写真家のドナータ夫人と共に尾道や直島、京都などを旅して撮りおろした写真を公開した「ヴィム&ドナータ ヴェンダース写真展」が表参道ヒルズで開催された。それを観に行ったのだけれど、とても大きなパネルに独特の色合いで焼きつけられた写真は、映画のように何とも言えない味わいだった。このときの写真は、『尾道への旅 ヴィム&ドナータ ヴェンダース写真展』として、朝日新聞社から発行されたが、現在のところ古本店などでも売り切れのよう。残念。

www.nitesha.com

 

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