♯今日の1本 是枝裕和監督の『誰も知らない』
昨日開催された第39回日本アカデミー賞で、是枝裕和監督が最優秀監督賞を受賞した。
その受賞スピーチで(記憶で書いたので、監督の正確な言葉ではないけれど…)、「2年ほど前までは日本アカデミー賞には縁がないものと思って、テレビを見ながら言いたい放題言っていたが、最近は、授賞式に呼ばれるようになった。こういう賞もいただいて、今後は、この賞がよりよくなっていくように自分も考えていきたい」という内容のことを言っていた。
カンヌ国際映画祭などで受賞経験もある是枝監督が、日本アカデミー賞に縁がなかったというのはちょっと意外だったけれど、よく考えてみれば、確かに、是枝監督の名前を世界に知らしめた『誰も知らない』は、日本アカデミー賞で優秀賞にも選ばれていない。
つい先ごろ開催された「第88回アカデミー賞授賞式」では、ノミネートがすべて白人俳優ばかりということが話題になっていたが、日本のアカデミー賞も自分の中では「ノミネートされる映画が偏っているな」という印象が強かった。今後、日本アカデミー賞も少しずつ変わっていくだろうか。
是枝監督の受賞作『海街diary』はまだ観てないので、ここでは、『誰も知らない』の感想を。。。
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第57回カンヌ国際映画祭で、この映画の主演俳優・柳楽優弥くんが史上最年少で主演男優賞を受賞。この華やかなニュースは日本中を駆け巡ったが、映画の内容は、その華やかさとは大きくかけ離れた、実在の「子ども置き去り事件」を題材にしたものだった。
友人から、「観た後、数日経ってもシーンを思い出すたび涙ボロボロ」と聞いていたのだが、ただ悲惨なだけの映画ではなかった。
確かに、テーマは重く、気がつくと涙が流れている。でも、子どもたちを「かわいそう」と思う気持ちよりも、「子どもって、なんて素晴らしいんだろう! どんな些細な日常にも喜びや幸せを見つけ、ただ生きることそのものに喜びを感じられる生きものなんだなぁ」と強く感じた。
本来、子どもが持っている無限大の可能性に気づかされ、そこにいたく感動してしまったのだ。
子どもたちが置かれた状況は、確かに悲惨だ。父親の違う4人の子どもをひとりで育ててきた母親が、新しい恋人と幸せになりたいからと、子どもたちを置いて家を出てしまう。戸籍もなく、学校にも行かず、周囲の大人にその存在を知られることなくひっそりと生きてきた子どもたち。それが、唯一の庇護者であった母親から見捨てられてしまうのである。
この映画は、残された4人の子どもたちが、周囲の大人に頼ることなく、秋から冬、春、夏へと移り変わる季節をどうやって生きて、暮らしたか、それを追った物語だ。
最初のうちはあった母からの送金も、徐々に途絶え、子どもたちが暮らすアパートの電気やガスは止まり、暑い夏になってからは、水さえも止められてしまう。どんどん薄汚れていく子どもたち。
しかし、子どもたちはたくましい。
子どもたちが外で拾ってきた土を、カップラーメンの空いた器に入れ、種を育てるシーンがある。大人の発想でいくと、「食べられる野菜の種を買ってきて育てる!」なのだが、子どもたちは道端や工事現場で拾った雑草の種を植えて育てるのである。
大人から見捨てられた子どもたちが、自分よりももっと弱い小さなものを保護して育てようとする、その姿に胸をつかれる。
YOU演じる母親は、最初から、柳楽優弥くん演じる長男の明に頼りっぱなしだ。誤解を恐れずに言えば、彼女が頼りたくなる気持ちもよくわかる。小学6年というのは、ちょうど思春期がくるか、こないかの時期で、子どもらしい素直さと、妙に大人びた面を持ち合わせている。生意気を言いながらも親の言うことには逆らわないし、妙に大人びた正義感もあるから、頼りにされたらその頼まれごとを全うしようとする。映画の母親は、そこにつけ込んだのである。
わが身を振り返って、考えさせられることがたくさんあった。
子どもを見捨てないまでも、子どもの本来の姿、可能性ある未来を見ずに子どもの良さをつぶしている大人がたくさんいるのではないか? 子どもはただ、庇護するだけの存在ではない。でも、だからこそ、無限大の可能性を持った子どもを守る義務が大人にはある! そんな力強いメッセージもこの映画からは感じられた。
是枝監督は、主に、テレビのドキュメンタリー番組を作ってきた人だ。初監督作『幻の光』で第52回ヴェネツィア国際映画祭で金のオゼッラ賞を受賞。この映画に主演した江角マキコは自然体で、とっても美しかった。この映画の子どもたちも、長い時間をかけて自然体の演技を引き出したようだ。柳楽優弥くんの主演男優賞もこの演出力があってこそだったのだろう。
この映画の主題歌、タテタカコさんの宝石という歌もとてもよかった。
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●是枝監督のブログ
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●是枝監督の受賞作『海街diary』は、すでにDVD化されていますが、4月2日、3日に開催される「第10回ららヨコハマ映画祭」で上映されるみたいです。
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#今日の1本 原作本を超えた爽快感が味わえる「魂萌え」
桐野夏生の原作本は衝撃的だった。
「夫の浮気」や「財産を狙う子ども」という題材はよくある話だろう。それが、彼女の手にかかると、ドロドロの怨念の世界へ行くのではなく、59歳の女性の凄みのある、それでいて一種さわやかな成長物語へと結実する。
夫に10年来の愛人がいた。
そのことを夫の死後知った主人公。これは、ものすごく残酷なことだと思う。夫が生きていれば、ののしり、罵声を浴びせ、自分の感じた裏切りの気持ちを相手にぶつけることができる。それができない状況では、普通ならどこまでも、どこまでも深い穴に落ちていくのではないだろうか。
こういう傷は、夫を愛していたからより傷つくとか、愛していなかったから傷つかないとか、そういう問題ではないと思う。自尊心の問題なのだ。
主人公は、子どもたちにもその自尊心を踏みにじられるような行為をされるが、彼女なりのやり方で、最後には踏みにじられた自尊心を取り戻していく。
原作に感動して映画を見ると、多くの場合、失望することが多いが、阪本順治監督のこの映画は、私の中では数少ない例外となった。
まず、キャラの立ち方がスゴイ!
本を読んでいたときには、60歳間近の主人公、その夫、愛人の色恋が、リアルに感じられなかった。でも、映像化されることで、よりリアルに主人公やその周辺の人々の息づかいが伝わってきた。
特に、妻vs愛人の対決場面は見所満載だ。
妻を演じる風吹ジュンと愛人を演じる三田佳子。とても静かな台詞のやりとりの中にも、火花が飛ぶさまが見えるようだった。
ラストに向かっては、原作をも超えたのでは?と思えるような爽快感だった。
もちろん、現実はそう甘くない。そう言えるかもしれないが、映画にはやはり、どこかに夢がないと…。私自身は、その希望あふれる描き方にとても感動した。
特に、ラストに流れる映画「ひまわり」。
多感だった10代のころ、ソフィア・ローレンとマスチェロ・マストロヤンニの駅での別れのシーンに大泣きした記憶がある。戦争で行方不明だった夫がロシアで生きていると知り、会いに出かけた妻。しかし、記憶喪失だった夫にはすでにロシア人の妻と娘がいたと知る。
駅での二人の別れのシーン。妻は涙を隠し、列車に乗る。
夫を深く愛しながらも、すがりつくことをせずに、前を向いて歩いていくこのシーンが、見事に「魂萌え」の主人公に重なってくるのだ。
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過去に感動した作品をもう一度観るべきか、『グリーン・デスティニー』に関連して。。
ここのところ、Twitterで『グリーン・デスティニー』のタイトルを観るなぁ、なぜだろうと思って検索したら、
「グリーン・デスティニー」の続編が「Netflix」で16年2月26日に全世界同時配信! : 映画ニュース - 映画.com
というニュースが出てきた。なんだ、知らなかったよ〜、観たいなぁと思ったもののNetflixには加入してないから無理だった。
そういえば、1月に『メモリーズ 追憶の剣』を観たのだが、まず思ったのは、「ワイヤーアクション懐かしい!!」ということである。
同時に、15年も前なのに、『グリーン・デスティニー』を観たときの感動もよぎってしまったのだ。細部は忘れてしまっているものの、ラストシーンに感じた切なさ、爽快感は今でも心の片隅に残っていて、「う〜ん、メモリーズはグリーン・デスティニーほどの感動じゃないな」と思ってしまった。どうやら、『グリーン・デスティニー』は、私の中でこういった任侠もの、ソード・アクションものを観るときの基準のようになっているらしい。
この映画をもう一度観たいという気持ちは常にあるのだけど、過去の感動を再び味わえないのではないか、という不安がよぎって、実はまだ一度も実現していない。
過去の感動を忘れないように、2000年当時の感想をそのまま書いておこうと思う。
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武術の使い手は、空を飛ぶことができる!
それを知らないで観ると、最初はちょっと戸惑う。でも、そのうち、『マトリックス』をも上回るアクションシーンの迫力に、「武術の使い手なんだから、空を飛べてもおかしくない」と、妙に納得させられている自分がいる。
あとは、主人公がスーパーマンのように真横に飛んで去っていこうが、しなる竹のてっぺんに立って、戦いを繰り広げようが、一切気にならなくなる。
爽快な気分を味わいたくて観に行った。もちろん爽快感は十二分に味わったが、ラストシーンでは思わず涙がこぼれそうになった。勝ち気な主人公が選んだ道、そして、ダイナミックで詩的なビジュアル、さらにヨーヨ・マの哀愁漂うチェロの音色。映画ファンにはたまらない、映画的魅力に満ちたラストシーンだった。
名剣グリーン・デスティニーの使い手を演じるチョウ・ユンファは、体つきは武術家には見えないが、結構動きがいい。何より、重厚感漂う演技に引き込まれた。その女弟子を演じるミッシェル・ヨーも、30代の女性ならではの落ち着いた雰囲気で、圧倒的な存在感があった。
チャン・ツィイーは、かわいらしい外見ながらも、主人公がもつ勝ち気さ、うちに秘めた燃える心を十二分に表現していてとても魅力的だった。
アン・リー監督の映画は、私にとって難解なものが今まで多かった。内容的に難解というのではなく、言葉でことさらに説明しない演出、どうとでもとれるようなラストなどから、どうも、心にストンとくる作品がなかったのだ。でも、この映画は心にすっと入ってきた。それは、チャン・ツィイーの演技によるところが大きいと思う。
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この映画の続編は、Netflixのオリジナル作品として製作されたようで、タイトルは『ソード・オブ・デスティニー』。ミッシェル・ヨーも出るらしい。
ソード・オブ・デスティニー/CTHD予告編 - Only on Netflix [HD] - YouTube
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観たあと、幸せ気分になれる。韓国映画『ビューティー・インサイド』&『ダイナマイト・ファミリー』!
1役を123人が演じるというぶっ飛びの設定で魅せる『ビューティー・インサイド』
自分の恋人が、朝目覚めるたびに、姿形ばかりか性別、年齢までもが変わってしまう病気だったら…。そんな人を愛することができるのだろうか。
あり得ない設定なのに違和感ないどころか、おしゃれで、上品で、あたたかい気持ちになる!
『ビューティー・インサイド』は、そんな映画だった。
主人公の家具デザイナー、ウジンを演じるのは123人の俳優さん。老いも若いも、男も女も、子どもまでいて、イ・ドンウク、イ・ジヌクなどテレビでよく見る俳優さんもたくさん出ている。ひとりの主人公として認識できるのか、と思ってしまうかもしれないが、主人公ウジンのナレーションが、最初から最後までひとりの俳優さんが担当しているので、混乱することなく観ることができる。
ウジンの恋人役を演じるのは、『監視者たち』『トンイ』のハン・ヒョジュ。透明感があって、やさしい雰囲気で、恋する演技も切ない演技もバツグン。ありえない設定の物語にすんなり気持ちが入っていけたのは、彼女のナチュラルな演技のおかげかなぁと思ったりもした。
ペク監督は、CM制作や広告デザイン、ミュージックビデオの世界でずっと活躍してきた人だという。その監督の長編デビュー作。
出てくる手作りの家具や、部屋の雰囲気、小物、衣装や、部屋に差し込む光の感じなど、映画全体がシンプルでおしゃれで、ほっとする空間だった。
https://www.facebook.com/gagaeizou
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5人兄弟と一緒に犯人探しのドキドキが味わえる『ダイナマイト・ファミリー』
ブログタイトルに「ライブ」と入れながら、最近はほとんど2PMがらみのライブしか行っていないのだけど…。そして、2PMの中で一番好きなのはJun.Kなのだけど…。末っ子チャンソンが出ているのならば観なくては!と思って行ったこの映画。
両親の再婚で不服ながらもきょうだいになった5人が、両親の失踪事件にからんで繰り広げるドタバタ&ハートフルな犯人探しの物語。テンポよく流れるストーリーに、所々アレ?と思わせる伏線を挟みつつ、5人兄弟と一緒に犯人探しのドキドキが味わえ、ホロリと感動もさせられてしまう。
2PMの人気をあてにしてるのか、「2PMのチャンソン待望の映画初主演!」という宣伝文句には、「いやぁ〜、あれは主演ではないでしょ」と突っ込みたくなるが、全然かっこよくないチャンソンは、とてもいい味だしていた。
さえない長男役のユン・サンヒョンや、ガラが悪いけれど愛すべき次男役のソン・セビョク、鋭い眼光が気になる長女役のイ・アイなど、それぞれキャラが立ってて、そこもよかった。監督はチョン・ヒョンジュン。ほかにどんな作品があるのか検索してみたけど、見つけられなかった。
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予備知識を入れるか入れないか!? 新作映画『オデッセイ』&『スティーブ・ジョブズ』のはしごで感じたこと
火星サバイバルに集中してほしかった『オデッセイ』
映画館に行くときは、なるべくなら予備知識を入れない派だけど、そもそも予備知識がないと、その映画を観ようとも思わないわけで、何とも悩ましい。
そういう意味では、大ヒット上映中の『オデッセイ』は、火星にひとり取り残されてしまった男が地球に還ろうとする物語ということで、「堅苦しそう、難しそう、暗そう」と勝手な妄想が広がり、当初は観に行くつもりもなかった映画だ。
『エイリアン』や『グラディエーター』『テルマ&ルイーズ』など、私が好きなリドリー・スコット監督の作品だということも後から知った。
じゃ、何で観に行こうかと思ったのかというと、Twitter経由で、町山智浩さんが映画音楽について解説している内容を知ったからだ。なんでも、宇宙サバイバル映画でありながら、劇中では、70年代のディスコ音楽が随所に流れるというのだ。船長が置いていったCDという設定で。。。それを知って俄然興味がわいてきて、観に行った次第。
で、映画が終わったあとにまず思ったのは、もっとわくわくハラハラしたかったのに、全然わくわくハラハラしなかった〜(1シーンをのぞいて)という、残念な感想である。
私の敗因は、もしかしたら、ディスコ音楽の使われかたについて、妄想が膨らみすぎたからかもしれない。観ているほうのわくわく感を盛り上げるためにもっと盛大に使われると思っていたら、思ったより控えめで、クスッとシニカルに笑えるくらいのおしゃれな使われ方だった。
勝手に妄想を膨らませて期待値を上げてしまったのだろうか。
マット・デイモン演じる主人公が、サバイバルのためにじゃがいもを栽培しようとしたり、通信環境を改善しようと奮闘する姿はそれなりにおもしろかった。火星でのサバイバルはおもしろいのに、頻繁に地球とのやりとりが出てきて、その関係者というか登場人物が多すぎるので、なんだか散漫な感じになってしまっているのだ。
とりわけびっくりしたのは、救出計画が頓挫しそうになったときに、急に現れる支援者。いくら中国市場が大切だからって、その人物が登場する必然性をまったく描かずに、とってつけたように出てきたことにびっくり!を通り越して興ざめしてしまった。
そんなこんなで、予備知識があったから、内容についてイマイチと感じてしまったのか、予備知識がなくてもイマイチと感じたのかはわからないけれど、70年代のディスコ音楽の使われ方は斬新だったので、ぜひぜひ町山さんの解説を聞いてほしい。聞くなら映画を観た後がおすすめだが…。
町山智浩 たまむすび:映画「オデッセイ」(リドリー・スコット監督)を解説 - YouTube
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会話劇なのに躍動感にわくわくする『スティーブ・ジョブズ』
映画館で映画を観るときは、たいていはしごをするのだけど、交通費節約のために同じ映画館または1本目の近くの映画館で観ることにしている。そうすると、スケジュールを組むのが結構大変で、1本目は観たい映画だけど、2本目は「時間がたまたま合っていたから」という、消極的な理由で選ぶことも多い。『オデッセイ』を観た日にはしごした、『スティーブ・ジョブズ』はまさにそういう映画だった。「会話劇だから退屈だった」「寝てしまった」などのレビューを見かけていたので、期待値は結構低かった。
ところが、予想は裏切られた。
冒頭から、マイケル・ファスベンダー演じるスティーブ・ジョブズと、マーケティング担当のジョアンナを演じるケイト・ウィンスレットのやりとりがすごくて、一気に映画の世界に惹き付けられた。
スティーブ・ジョブズというと、新製品発表のプレゼンテーションが有名だが、映画では、1984年、1988年、1998年のプレゼンテーションの舞台裏が描かれる。しかも、肝心のプレゼンテーションは描かれず、直前40分間に起こるさまざまなトラブル、諍い、議論が描かれるのだ。
演劇なみの会話量なので退屈なのかと思いきや、カメラは登場人物を追ってあわただしく動き回るので、サスペンスのような緊迫感に満ちている。途中、認知するしないでもめていたという娘・リサとのやりとりも出てきて、緊迫感はさらに高まる。
監督は、『トレインスポッティング』のダニー・ボイル。脚本は、『ソーシャル・ネットワーク』のアーロン・ソーキン。
予備知識なしで観たので、最初、ケイト・ウィンスレットの姿が地味すぎて、誰が演じているのかわからなかったほど。それでも、ものすごい早口で交わされる会話の数々、アップで映し出される表情の魅力でただものではないとわかったけど。。
とにかく、『オデッセイ』で映画的魅力って何かな、もっとわくわくしたいなと感じていたあとに観た『スティーブ・ジョブズ』は、舞台も、テーマも地味だったけど、俳優の魅力、演出の魅力、脚本の魅力にあふれてて、1本目でちょっとがっかりしていた気持ちが吹き飛ぶほど、わくわくした気持ちになれた。
これは、期待値が低かったからだろうか…。
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第88回アカデミー賞の行方…
今日は朝から、WOWOWで「第88回アカデミー賞授賞式」を鑑賞。
今年のアカデミー賞は、演技部門のノミネートがすべて白人俳優ばかりということで、開催前から物議をかもしていたが、司会を務めた黒人のコメディアン、クリス・ロックは、のっけからブラックジョークを連発。
さらに、授賞式の合間には、ノミネート作品の主役を黒人に変えた映像や、黒人が多く住むコンプトンで、住民にアカデミー賞のノミネート作品について聞いた映像を流すなどして、授賞式を見る人々に、終始、アカデミー賞が抱える問題点について、目を向けさせる構成になっていた。
すべて、ブラックジョークの味付けがされていたので、会場は笑いに包まれていたが、見ているほうは、お尻がもぞもぞするというか、何とも落ち着かない感じ…。
アカデミー会員数を増やすなどの改革をするようなので、来年以降はノミネートにも変化が出てくるのだろうか。
今年の賞レースは、レオナルド・ディカプリオが取るかどうかが注目されていたけれど、ようやく念願かなって受賞できて、みんながみんなホッとした瞬間だった。
個人的には、タイタニックのときのレオ様が好き。眉間にシワが寄って貫禄たっぷりの今の姿や、泥だらけ、傷だらけになりながら復讐にもえる『レヴェナント:蘇えりし者』のレオ様にはあまり興味をひかれないが、「賞を取った!」といううたい文句に弱いので、きっと見に行くと思う。
そのほかの受賞作は、WOWOWのサイトに詳しく紹介されている。
【追記】
クリス・ロックのブラックジョークの翻訳が、「BEAGLE the movie」さんのサイトで紹介されています。
♯今日の1本 サッカーファン必見の『ベルンの奇蹟』
アディダスの創始者はアディ(アドルフ)・ダスラーという名前である。
思わず「へぇ〜」ボタンを押したくなるようなネタのこの話(古すぎる!)、2005年公開のこの映画を見るまではその事実を全く知らなかった。
1954年、サッカーW杯の決勝戦で、西ドイツとハンガリーが戦ったとき、雨が降った後半戦で西ドイツはアディ・ダスラーが開発した取替え式スタッド装着のシューズを履いて、見事に逆転優勝したという。サッカーファンなら思わずにんまりしてしまうようなこのエピソードも、この映画にはバッチリ挿入されている。
思わず映画の本流から外れたところから話を始めてしまったが、この映画は、決してアディダス創始者の偉業を語る映画ではないのでご注意。
この映画は、1954年に西ドイツがサッカーW杯で優勝した事実を重要なモチーフにして、初戦から決勝までをリアルな映像で再現しつつ、そこに戦争後の捕虜生活で傷ついた男とそれを見守り、新たな絆を結ぶ家族の物語を絡めている。
サッカー経験者の監督、俳優で作られた見事なサッカー愛映画であり、父子、家族の絆を描いた普遍的な物語にもなっているところがすごい。
W杯決勝戦の再現は、観客席こそCGを使っているようだが、実際の試合シーンは巧みなカメラワークで作り物でないサッカーの迫力と高揚感を見事に伝える映像になっている。
ヨーロッパや南米の映画を見ていると、子どもが空き地でサッカーをするさりげないシーンが挿入されていることが多い。この映画でももちろん出てくる。
映画の時代は、第二次世界大戦後、まだ間もないころ。主人公の少年が、近所の空き地で友人たちと蹴るサッカーボールは、小汚い布を何重にも巻いて球状にしてひもで縛っただけのお粗末な物だった。それでも、子どもたちは2チームに分かれて熱い戦いを繰り広げる。球状の物体さえあればできる!
そんな単純なスポーツの底知れぬ魅力をも語っている映画でもある。
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